B'z松本孝弘のギター美学|伝説のトーンと歴代機材の全貌を徹底解剖
1999年、米ギブソン社から世界で5人目、アジア人ギタリストとして初となるシグネチャーアーティストに選出された松本孝弘。B'zのコンポーザー・プロデューサーとして数々のミリオンヒットを生み出し、グラミー賞受賞という世界最高峰の栄誉を手にした今も、そのギターサウンドへの探求心は衰えを知りません。
ロックと歌謡曲の融合を極めた極太のトーン、咽び泣くようなチョーキング、そして緻密に計算されたシステム設計は、国内外の多くのプレイヤーやリスナーを魅了し続けています。本稿では、松本氏が手にしてきた歴代の銘器や独自の音作りのメカニズム、プレイヤーとしての真の腕前評価まで、多角的な取材データと音楽的知見を交えて余すところなく紐解きます。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:日本人初のギブソン・シグネチャー獲得から続く、1959年製レスポールやDC、ファイヤーバードなど歴代モデルの進化系統を網羅。
- 要点2:専属チーム「FAT」開発のエフェクターやアンプ群、ピッキングのダイナミクスに依存する唯一無二のトーン構造を解明。
- 要点3:テクニック至上主義とは一線を画す、圧倒的なリズム感とメロディ構築力に裏打ちされた真の演奏力と機材選択の判断基準を提示。
【至高のトーン】B'z松本孝弘のギターに隠された凄さの秘密と音作りの真髄
音楽関係者やギタリストの間で長年語り継がれているのが、「松本氏が弾けば、どのアンプを通しても一瞬で彼の音になる」という現象です。この“Takトーン”と呼ばれる極上の音色は、単なる高級機材の組み合わせだけで生み出されているわけではありません。
音作りの根幹にあるのは、徹底して鍛え上げられたピッキングの強弱コントロールと左手のビブラート技術です。松本氏本人が過去の音楽専門誌のインタビューで「歪み(ゲイン)は深くしすぎず、手元のニュアンスで倍音をコントロールしている」と明かしている通り、アンプセッティング自体は過度なハイゲインではありません。弦に対して正確な角度でピックを当て、アタックの瞬間ごとにピッキングハーモニクスを微妙に混入させることで、分厚く芯のあるサステインを生成しています。
また、ギブソン公認のシグネチャーピックアップ「TAK MATSUMOTO SPECIAL」をはじめ、中低域(ミドルレンジ)が豊かに押し出される帯域設計がなされています。バンドサウンドの中でボーカルの稲葉浩志氏のハイトーンと決して干渉せず、それでいてアンサンブルのセンターを突き抜けてくる音像定位こそ、長年のスタジオワークとドームクラスのスタジアム公演で培われた音響設計の結晶です。

【歴代モデル比較】ギブソン日本人初の快挙からTak Matsumoto DCまで
松本孝弘氏のキャリアは、名機と呼ばれるギターの進化の歴史そのものです。ヤマハのMG-Mシリーズで駆け抜けた初期を経て、1999年に登場したキャナリーイエロー(Canary Yellow)のレスポールは、鮮烈な黄色とブラックパーツのコントラストでギターキッズに衝撃を与えました。
さらに2000年代後半には、左右対称のダブルカッタウェイを採用した独自シェイプ「Tak Matsumoto Double Cutaway(DC)」を開発。高音域への圧倒的なプレイアビリティとレスポール特有の豊かな鳴りを両立させ、ギブソン社の歴史に新たなボディタイプを刻み込みました。また、近年ではクラシックな佇まいを持つファイヤーバード(Firebird)のオリジナル仕様や、ヴィンテージの頂点である1959年製レスポール(シリアル#9-1156など)の復刻プロジェクトなど、そのバリエーションは多岐にわたります。
| モデル名 | 登場時期・特徴 | 中古市場相場(2026年基準) | サウンド特性と編集部評価 |
|---|---|---|---|
| Les Paul Canary Yellow | 1999年登場。日本人初シグネチャー。鮮烈なイエローカラー。 | 約70万〜120万円(初期Custom Shop製) | 立ち上がりが鋭く、エッジの効いたドライブサウンド。90年代後半のB'zサウンドの象徴。 |
| Tak Matsumoto DC (Custom/Standard) | 2005年〜。ダブルカッタウェイ、キルト/フレイムメイプルトップ。 | 約80万〜150万円以上(限定カラーは高騰) | ハイポジションの演奏性が極めて高く、甘く太いサステインと分離感に優れた万能機。 |
| Tak Matsumoto Firebird | 2015年〜。レスポールヘッド仕様、特別配色のバーストフィニッシュ。 | 約60万〜90万円 | ファイヤーバード特有の抜けの良さにレスポールの太さが同居。ブルージーな楽曲で真価を発揮。 |
| 1959 Les Paul Standard (Historic/Aging) | 本人の実機バースト(#9-1156)を3Dスキャンで忠実再現。 | 150万〜300万円超(コレクターズピース) | 木材本来の豊かな生鳴りと枯れた極上ヴィンテージトーン。ピッキングニュアンスの再現性は随一。 |
【実態検証】FAT製エフェクターとアンプシステムが創り出すライブ現場のリアリズム
ドームやスタジアムという広大な空間において、なぜ松本氏のギターは埋もれず、オーディエンスの胸に直接響くのか。その鍵を握るのが、B'z専属の機材開発チーム「FAT(Feeling Art Technology)」の存在です。
市販のエフェクターでは過酷なツアー環境や松本氏のシビアな音質要求に応えきれないことから、FATはカスタムペダルを自社開発。固定ワウペダル(FAT 514.Dなど)やクリーンブースター、コーラス、ディレイに至るまで、内部のハンダや配線材、電源回路の一角まで妥協のないチューニングが施されています。
アンプセクションにおいては、ボグナー(Bogner Ecstasy)やマーシャル、オリジナル開発のFATアンプヘッドを核に据え、複数のキャビネットをマイクで集音。PAエンジニアと連携してステージ上の余計な低域被りをカットしつつ、ソロパートで一気に中域が押し出されるルーティングを構築しています。巨大なシステムでありながら、シグナルロスを極限まで排除する職人技が、あの濃密な音圧を支えています。

一般に知られていない盲点とネットの誤解|「機材が良いだけ」論を覆す演奏力の真実
ネット上の掲示板やSNSでは時折、「松本孝弘は高額なヴィンテージギターや特注システムを使っているから良い音が出ているだけではないか」という短絡的な意見が見受けられます。しかし、これはスタジオミュージシャン出身である彼のキャリアと音楽的資質を無視した誤解に過ぎません。
松本氏はB'z結成前、数多くのトップアーティストのレコーディングやツアーサポートを務めた百戦錬磨のスタジオプレイヤーでした。譜面初見演奏のスピード、ミリ秒単位で正確なリズムキープ、そしてピッチ(音程)の揺らぎが一切ないチョーキング精度は、同業者であるプロギタリストたちからも絶大なリスペクトを集めています。
早弾きのスピードのみを指標とする一部のテクニカル志向とは異なり、松本氏の本質は「歌うようなフレージング」と「絶対的なタイム感」にあります。どんなに優れた機材を用意しても、弾き手のピッキング角度や指先の圧力がブレていれば、あのような艶のあるロングトーンは鳴り響きません。名機を手足のように操るだけの圧倒的な基礎体力があって初めて、機材のポテンシャルが100%引き出されているのです。
心揺さぶる名演|B'zギターソロ名曲のフレーズ分析と音楽的インパクト
B'zの楽曲において、ギターソロは単なる間奏ではなく「もうひとつのボーカルメロディ」として機能しています。松本氏のペンによるフレーズは、ペンタトニックスケールを基調としながらも、随所にダイアトニックコードの構成音(コードトーン)を的確に捉えた美しいラインを描きます。
代表的な名演を挙げれば枚挙に暇がありません:
- 『LOVE PHANTOM』:疾走するストリングスと同期しながら、哀愁を帯びたマイナーペンタトニックの連続技で緊張感を最高潮に高める構築美。
- 『Calling』:ヘヴィなリフから一転、バラード調のブレイク部分で咽び泣くようなチョーキングと深いビブラートが楽曲のドラマ性を決定づける。
- 『ultra soul』:キャッチーなリフワークに加え、ソロ後半での流れるようなレガートとピッキングのコンビネーションが爽快感を生む。
- 『TIME』:コード進行の移り変わりに寄り添い、聴き手の琴線に触れる歌謡的メロディをギター一本で完璧に表現。
これらの楽曲に共通しているのは、「一度聴いたら口ずさめるソロ」である点です。速さや難易度を誇示するのではなく、リスナーの記憶にメロディを焼き付ける作曲センスこそ、松本孝弘という音楽家の最大の強みといえます。
【プロの結論】シグネチャーモデル導入に向いている人・慎重になるべき人の判断基準
松本氏のシグネチャーモデルやFAT系機材の導入を検討しているプレイヤーに向けて、編集部としての客観的な選定基準をまとめました。
【導入をおすすめできる人】
- 骨太で抜けの良いハードロックトーン、伸びやかなロングサステインを求めている人
- ミドルレンジ主体のアンサンブルで、バンド内の音抜けに悩んでいるリードギタリスト
- ピッキングニュアンスや強弱表現を磨き、演奏の表現力を一段引き上げたい人
- コレクターズアイテムとしての高い資産価値や工芸品レベルの造形美を重視する人
【慎重に検討すべき人】
- 極端なダウンチューニングやジェント(Djent)系のような超モダン・ドンシャリサウンドを主軸とする人
- ピッキングの粗さをアンプの過度なハイゲインで誤魔化したいプレイヤー(ニュアンスがダイレクトに出るため粗が目立ちやすい)
- 軽量なギター(3kg前後)を最優先とし、長時間の立奏での取り回しやすさだけを求める人(レスポール系は重量がある個体が多い)

【b'z 松本孝弘 ギター】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:松本孝弘氏がギブソンのシグネチャーアーティストになったのはいつですか?
A1:1999年です。ジミー・ペイジ、ジョー・ペリー、エース・フレーリー、スラッシュに続く世界で5人目、アジア人・日本人としては初の快挙として世界的な話題となりました。
Q2:1959年製レスポール(バースト)とは何ですか?なぜそれほど価値があるのですか?
A2:1958年から1960年にかけて製造されたギブソン・レスポール・スタンダードの通称で、特に1959年製は木材の質やピックアップ(PAF)の音質からエレキギターの最高峰と称されます。松本氏所有の実機(シリアル#9-1156など)は数千万円〜数億円規模の歴史的価値を持ち、ギブソン・カスタムショップによって精密にクローン化されています。
Q3:自宅練習環境で「Takトーン」に近づけるための機材選びのコツは?
A3:歪ませすぎない中域重視のオーバードライブペダルを選び、アンプ側ではミドルを少し持ち上げ、トレブルとプレゼンスを上げすぎないセッティングが基本です。また、薄いピックではなく1.0mm以上の硬めのおにぎり型やティアドロップ型ピックを使い、弦に対してしっかり当てて弾くことがトーン再現への近道です。
Q4:Tak Matsumoto DC(ダブルカッタウェイ)のメリットは何ですか?
A4:通常のレスポールでは手が届きにくい20〜22フレット付近の高音域へスムーズにアクセスできる点です。レスポール特有の甘く太いサステインを維持しながら、ハイポジションでのチョーキングや速弾きが劇的に弾きやすくなっています。
まとめ:進化し続けるトーンへの探求とギター哲学
松本孝弘氏が手にしてきたギターの歴史を振り返ると、そこにあるのは過去の栄光への安住ではなく、常に理想の音を追い求め続ける求道者の姿です。日本人初のギブソン・シグネチャーという金字塔を打ち立てた後も、DCシェイプの開発、ファイヤーバードの再解釈、そしてヴィンテージ・トーンの再現プロジェクトへと挑戦は続いています。
緻密な機材システムと、妥協なき反復練習によって磨かれたピッキング技術。その両輪が合致して生まれるTakトーンは、これからも世代を超えて多くの音楽ファンとプレイヤーを惹きつけ、日本のロックシーンの金字塔として輝き続けるはずです。 (出典: bz 松本孝弘 ギター(Yahoo!ニュース))